AN INSTALLATION  ·  2026

PULSATING LIGHT — Takuma Sasaki

A boundary grows richer as it blurs.

SCROLL
01

導入

森の中に足を踏み入れると、生と死が混在していることに気づく。

生きものは死を迎えると微生物によって分解され、土へ還る。
それが植物を育てる養分となり、次の生命へとつながっていく。

土は、その循環の始まりであり、終わりでもある。
生命の始まりと終わりが重なり合う場所だ。

その境界は曖昧なまま、うつろい続ける。
その曖昧さが、森をより豊かに見せている。

PULSATING LIGHT は、その目に見えない豊かさに目を向ける試みである。

02

コンセプトムービー

03

作品概要

PULSATING LIGHT は、一本の木の根を中心に、透明な樹脂、光、着脱できる衣服を組み合わせた立体作品である。

根は、木を支え、土から水や養分を受け取る場所でありながら、普段は地中に隠れている。本作ではその根を地上に出し、一部を透明な樹脂に置き換えた。樹脂の内側に光が広がると、木から切り離された根が、再び脈打っているように見える。生きているのか、すでに死んでいるのか。その境目が光によって揺らいでいく。

根を覆うジャケットは、土の代わりとして置かれている。土が根を包み、生命の循環を支えるように、ジャケットも根と光を柔らかく包む。土と衣服はまったく異なるものだが、内側にあるものを守り、外の環境との接点になるというところで重なっている。

ジャケットは実際の衣服と同じように、脱がせたり、別の服に着替えさせたりできる。設置する場所に合わせて服を替えれば、同じ根でも違った姿を見せる。本作は一つの形に固定されたものではなく、場所や時間に応じて変わり続ける作品である。

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作品を構成する要素

ELEMENT Ⅰ

木の根

複雑に枝分かれした一本の木の根を、作品の中心に据えた。表面を丁寧に磨いて漆を塗り、木肌の表情に艶を与えている。

ELEMENT Ⅱ

樹脂と光

根から伸びる分岐のうち5本を、透明な樹脂のパーツに置き換えた。各パーツの付け根には小型のLEDが仕込まれている。点灯すると、光が樹脂の中へ広がり、パーツ全体が内側から発光しているように見える。

5つのLEDは、それぞれ異なるタイミングで明滅する。一定の周期で、すべての光が同時に強く輝く瞬間が訪れる。ばらばらだった光が、一つの拍動にそろう。

樹脂の中には、血管のように枝分かれした気泡が閉じ込められている。光が通ると、それまで目立たなかった気泡が浮かび上がる。

ELEMENT Ⅲ

ダウンジャケット

根を覆うダウンジャケットは、服飾職人に仕立ててもらった。中綿を厚く入れ、土のように根を柔らかく包む形にしている。

生地には、アウトドアウェア用の機能素材を使った。自然の中で使われる素材であるため、作品を森に置いたときに、その性格がよりはっきりと表れる。

ジッパーやボタン、リブなど、実際の衣服に使われるディテールも取り入れた。造形物を覆うためだけのカバーではなく、一着の服として仕立てられている。

06

手仕事とテクノロジーのあいだ

制作には、木の根の3Dスキャンと3Dプリント、CGによるパーツ設計、クロスシミュレーションによる衣服の検証、照明機構の設計など、さまざまな技術を使った。照明を制御するプログラムの開発には、AIを補助的に用いている。

制作は、デジタルからフィジカルへ一方向に進むわけではない。3Dスキャンしたデータを3Dプリンターで出力し、実際に手に取ってみる。すると、画面上では気づかなかった問題が見つかることもあれば、そこから新しい形を思いつくこともある。その結果を設計に戻し、また形にする。

ジャケットも同じようにつくった。PC上で布のふくらみやシワを確認しながら形を考え、その案を服飾職人に渡した。職人は縫製の経験をもとに細部を調整し、実際の服へと仕上げていく。デジタル上で設計し、人の手で形にする。この往復そのものが、制作の重要な一部となっている。

テクノロジーは見えないところで脈動し、手仕事がそれを包み込む。AIを含むデジタル技術が制作に深く入り込む現在、鑑賞者が最初に目にする表面は、人の手で仕上げたいと考えた。
デジタルとフィジカルを往復する中で、手仕事とテクノロジーの境界は曖昧になり、両者のあいだから新しい表現が生まれていく。

07

今後の展望

作品は、これからも姿を変えつづける。今後は、ふたつの方向への接続を構想している。

データへの接続

現在の光は、あらかじめ設計したリズムによって制御されている。今後は、その制御を森に設置したセンサーや、作品が置かれる都市の環境データと結びつける。その場所で起きている環境の変化を、光の明滅へと置き換えていく。

土地への接続

また、作品を設置する土地ごとに、その場所の環境や特徴を素材や模様に取り入れた、新しい服を仕立てる。都市の光や動きを表す生地、光を受けると模様が浮かび上がる素材など、土地が変われば、作品が纏う姿も変わっていく。

作品を構成する素材も、時間とともに変化する。漆の艶や生地の風合いは年月を重ね、服と設置場所も変わっていく。そのたびに、作品は異なる姿を見せるだろう。

生と死の境界は、曖昧なままうつろい続ける。手仕事とテクノロジーの境界もまた、変化し続けている。境界は、曖昧になるほど豊かになる。そのふたつのうつろいが重なる場所で、本作は拍動し続ける。

CREDITS
ART & DESIGN
Planning / Director / Designer
Takuma Sasaki
Costume Designer
Koshiro Ebata
Stylist
DAN
(kelemmi)
LIGHTING & TECHNOLOGY
Lighting Planning & Design
Satoshi Yanagisawa
(Triple Bottom Line)
Lighting System & Mechanical Design
Yoshihiro Hirata
(R2)
Technical Support
NICHINAN GROUP
PRODUCTION
Creative Director
Ryo Kitabatake
Producer
Ko Yamamoto
Project Manager
Ren Ishikawa
PHOTOGRAPHER
Yuya Shiokawa
CONCEPT MOVIE
Cinematographer
Yuya Shiokawa
Colorist
Toshiki Kamei
(ARTONE FILM)
Color Assistant
Yuta Nakano
(ARTONE FILM)
Sound Design
Takahisa Mitsumori
本作は、素材と技術に真摯に向き合い続けてきた職人たちの手によって形づくられました。

作品を構成する一つひとつの要素には、それぞれの分野で培われた技と誇りが息づいています。